社外取締役を務めている株式会社リボルバーの創業者、小川浩が2025年4月10日(日)に逝去してから1年が経ちました。
小川とは、私が「MACPOWER」という雑誌を主な執筆先としていた時代に知り合いました。
2002年くらいでしょうか、当時はまだブログ黎明期。日本で「ブログ」と言ってもわかる人がほとんどいませんでした(「ブログ」と書くべきか、元々の呼称である「Weblog」と書くべきか悩んでいた時代です)。私はいずれこの「ブログ」が世界的なトレンドになるような予感がして「ブログ」の小特集を提案します。日本人は慎ましいから「こんなものが日本で流行るわけがない」と編集会議では言われたものの、どうしても書きたくて無理やり企画を通してもらい2Pだか4ページだかの記事を書いたことがあります。
 MACPOWERを愛読し商社などの大企業での経験があった小川さん(当時は日立製作所勤務)は、その記事を読んだらしく、このブログが一般ユーザーはともかく絶対に仕事の現場での暗黙知共有に役立つと直感し、日立でBOXERブログという企業内ブログ(イントラブログ)サービスを立ち上げ、それを商品として展開します。そして企業内ブログの連載をMACPOWERで書き始めていました。
そのために編集部でも何度か顔を合わせたことがあり、そのまま私を誘ってくれてもよかったと思うのですが、どうも気が引けたらしく、当時、小川さんが一緒に仕事をしていた一人に私の米国の大学での友人(全然連絡を取っていなかった)がいるといい、3人で一緒に食事をすることになりました。

Andy Warholにあやかってオフィスに「THE FACTORY」という名前をつけてしまう小川浩。当時、平均年齢が若かった社員たちには、なかなかこのセンス伝わらなかった——笑 男性用トイレとかに行っても、一捻りの書かれた言葉が書かれていて、今でもクスっとさせられます。

 こだわりが強く、すべてを自分で仕切って準備したがる小川さん、その時はどんなレストランだったのか思い出せませんが、亡くなるまで驚かされるお店ばかりだったので、満足して帰ったことだけは覚えています(もしかしたら麻布十番のシンガポール料理だったかも知れません。)。
 当時、私はソニーの青木剛一さん(drikin)主催で現在も続くブログディナーの立ち上げ時のメンバーの1人でした(途中からプロジェクター係になって毎月重いプロジェクターを家からレストランに運んでいました)。日本最初のブログサービスを立ち上げる@niftyの人も、OCNブログを立ち上げた人、はてなの創業者、現在のメルカリの創業者など錚々たる顔ぶれが毎月集まる会で、日本のブログサービスの広がりはこの会での交流から生まれていると言っても過言ではない凄い会でした。
 小川さんの企業内ブログという発想は面白く、私にはない視点だったので小川さんも誘ったところ、小川さんもレギュラーの参加者になり、法人系に強い人たちと一緒にブログの法人向け展開について熱い話し合いをしていました。そしてついには毎日コミュニケーションズ社から「ビジネスブログブック」という3部作の本を出版する計画も進めていました。
 実は第1巻の発刊後に「Nobiさんも一緒にやろう」と私にも声がかかり、第2巻と第3巻には少し関わらせてもらいました。その後、小川とは「アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者」、「アップルvs.グーグル」といった本も共著しました。

ブログディナー界隈では、特にgumiの国光さんと仲が良かった!?まあ、国光さんはフレンドリーで色々な人と仲良いけれど、小川からよく名前が出てきました。

 常に潮流を変える新しいテクノロジートレンドに目をつけてはそれをビジネスに変える小川浩。その後、ブログの新着記事を通知するRSSという技術に着目。「RSSは情報の血流」と語り、RSSで情報が流通/循環するエコシステムのビジョンを描き、feedpathとmodiphiという会社を順に創業します。
 私は経営のことや、人間関係のことなどはあまり把握していなかったのですが、一度作った会社をやめて新会社を設立したりする背景には、色々な苦労もあったことでしょう。しかし、そうしたことは一切口にしないのが小川流。
 結局、私はそうしたことを一切、耳にすることもなく純粋に会社の戦略や美学についてのアドバイスを求められます。
 modiphi社のロゴがギリシア文字の「φ」の真ん中の線が少し折れ曲がっているというロゴで「なるほど、ファイの字をmodify(いじって)この形にしたのか。小川さんらしい」と、そのこだわりとセンスに驚いて本人に伝えると「さすがNobiさん、わかってくれて嬉しい」と喜んでいたことを今でもよく覚えています。
 この頃から小川さんの会社のアドバイザーや社外取締役をお願いされ、ほとんど貢献できていないながら月に1回程度のミーティングなどで顔を合わせたり、メールを交換する交流が始まりました。
 たまに会社が注目を必要な時には、アップル銀座などの凄い会場で一緒のトークもやってきました。
 創業者にして1番のセールスマンでもある小川さん、レストランもトークイベントの会場も同じくらいのこだわりと熱意で凄い場所を見つけてきて予約してしまい、毎回それに驚かされました。

2017/2/23 REVOLVER Office Opening

youtu.be

 そんな小川さんが彼も敬愛していたスティーブ・ジョブズがiPad 2を発表し逝去した後、2012年に立ち上げた会社がREVOLVER社です。原点のブログに戻るように、製品として出したのはCMS。
 今、多くのオウンドメディアやコーポレートブログが、WordPressというプログラムを使って運営されています。しかし、初期費用が安いというだけの理由でいざ使ってみると、とんでもなく色々と面倒で使い勝手が悪い。プラグインなどの連携ソフトがたくさん用意されていて、それを使ってさまざまな機能が追加できるのはいいけれど、結局それをやり始めると、システムがさらに複雑になってしまい、結局、外部のIT屋さんに毎月お金を払って管理してもらうことになってしまいます。
 これに対して、REVOLVERでは、米国のMediumと呼ばれるサービスなどにかなり近い、まるでワープロのように簡単に文章を編集できるCMS(コンテンツマネージメントシステム)を2012年に作っていました。現在、これに似た感じで記事が投稿できるシステムとしては「note」が大成功を収めていますが、それとほぼ同じ機能を少し早く、そして企業ごとのニーズに合わせて作り込む形で提供。それがREVOLVER社のdinoです(当然、この記事もdinoで直接書いています。WordPressでは書いていて途中で消えてしまう心配があるので、まずはワープロで書いてからそれをコピペするのですが、dinoではそうした失敗を少なくとも私は経験していません)
 オウンドメディアブームの少し前に、小川さん独自の嗅覚で、そのトレンドを掴んで、これからはオウンドメディアの時代と講演活動なども積極的に行なっていました。
 
あまりどこで使われているかは公表していませんが、かなり有名なメディアも多く採用してくれています(自分が記事を書いている媒体も1社採用してくれているところがあって、個人用のdinoでは使えない校正用機能を初めてお客として使ってみたのですが編集者と著者でやり取りをする校正用インターフェースが秀逸で感心したのを覚えています)。

  小川さん自身もdinoを使って自身の趣味だったオートバイのWebメディア、「 lrnc.cc (ロレンス)」を立ち上げ、安定した大企業の顧客なども増えていたのですが、数年前から急にほっそりとしてしまったり、明らかに体調が悪そうな日があったりと心配になることが時々ありました。
 それでもコロナ禍後のリモート取締役会も、パソコンでやれば簡単なのに、あえてこだわってiPadを操って全て自分で仕切ってやっていました。

 そんな小川さんですが2025年に入ってから急に体調が悪化。そこでリボルバー社でも、万が一への備えという形でCTOの松本庄司を共同代表にしていたのですが、そんな中、4月に突然の訃報が耳に入りました。
 私は現CEOの松本から大阪・関西万博取材に向かう飛行機の中で訃報を受け取りました。

 あれから1年、松本さんと現役社員たちによる新取締役がお互いを支えながら運営する取締役会の体制はジョブズ逝去後、チームワークに切り替わったアップルの基調講演を彷彿とさせます。これが結構、いい感じでスピーカーが切り替わることで会議にもメリハリが出てきた感じがしています。

 製品のdinoもセキュリティー認証も獲得するなど安心して使えるCMSとして、ゆっくりではありますが堅実に前進を続けています。
 既にdinoをお使いのお客様は今後とも引き続きのご愛顧をよろしくお願いします(まだ知らない人は、おひとりさまに焦点を当てたサイト https:dino.singles やシネフィル、サッカーマガジンなどの事例サイトを見て導入をご検討ください。事例集: https:revolver.co.jp/Case_study /これはほんの一部で、いくつかメジャー媒体でもdinoを使ってくれているところがあります)。
 最後に小川さん、これまで本当に色々とありがとうございました。
 小川さんが亡くなった2025年はアートジャーナリストのチバヒデトシさんなど私が特段お世話になった方々が立て続けに亡くなって正直個人的にかなり辛い1年となりました。その分、彼らの知恵や思い出も盛り込みながら頑張るしかないですね。ちなみにチバさんもtokyo artというサイトを一時、個人用dinoの無料お試しで運営してくださっていました( https://tokyoart.dino.vc )。

小川さんありがとう。
新体制のREVOLVERは、
時々、小川さんの厳しいこだわりの言葉を思い出しながら、
これからもますます元気に頑張って行きます。

https://revolver.co.jp/_users/16915909

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*REVOLVER dino network 投稿 | 編集